骨粗鬆症の疫学
2011年の国勢調査で、65歳以上の高齢者は全人口に対しての割合は24%になり、その割合は年々増大しています。現在約1400万人の骨粗鬆症患者がいると推計されています。骨粗鬆症は、特に遺伝・加齢・生活習慣・閉経の影響を強く受ける総合的疾患です。高齢化が進んでいる日本では、2050年には3人に1人の割合になると予測されています。現在、骨粗鬆症の薬物治療を受けている人は決して多くありません。人口1,000人あたりの通院率はわずか18.6人で、高血圧の治療を受けている126.1人と比べると大変少ないのが現状です。
骨粗鬆症による骨折
「骨粗鬆症は将来なる病気で今は大丈夫だ」と考えている人が多い。骨粗鬆症は沈黙の疾患と言われその症状は少ない。しかし、骨粗鬆症による骨折は、高齢者の4大骨折といわれる脊椎椎体骨折(背骨)・大腿骨近位部骨折(股関節)・上腕骨近位部骨折(肩)・橈骨遠位骨折(手首)があります。これらの骨折は60歳以上から、年代別発生率が大きく上昇します。女性は男性に比べ、1.8~2.8倍が発症します。骨粗鬆症による骨折は、骨が脆くなっているため、再度骨折をする可能性が高くなります。したがって、まず骨折をしないように、骨粗鬆症を診断し治療を始めることが重要です。
骨粗鬆症は、骨がもろくなることで骨折しやすくなってしまう状態で、特に加齢とともに生じる病気です。現在、65歳以上の方の2~3人に1人ほどが骨粗鬆症であり、特に閉経後の女性の方は女性ホルモンの減少に伴って骨粗鬆症を発症しやすいです。
骨粗鬆症治療の目的
骨折は痛みのみならず、身体機能の低下をも引き起こしてしまいます。日本は世界有数の長命国ですが、健康寿命(身体的不自由がなく生活できる期間)は平均寿命よりも約10年も短く、特に要支援・要介護になってしまう原因の11.8%が骨折であると言われています。また、一度でも骨折をした方は、二度目、三度目の骨折をしやすいとされています。
骨粗鬆症治療を行い、骨折を予防することで、身体機能の低下を予防し、さらには健康寿命を伸ばすことができると考えられています。
診断と治療
骨粗鬆症の診断は、主には骨密度が低下していることや、過去の骨折歴(脊椎、股関節、手関節、肋骨、肩関節、脛骨(すねの骨)など)があることをもとに行います。これらの方は、骨折を防ぐため、骨粗鬆症治療を開始することが望ましいです。
骨粗鬆症の治療は、骨密度の数値、骨折歴の聴取、採血結果などをもとに、骨の状態や骨粗鬆症の重症度を判定して薬剤選択します。近年は、内服薬のみならず、非常に有効性の高い注射薬も開発されており、重症骨粗鬆症の方にも最適な治療が提供できるようになりました。
当院では、腰椎・股関節ともに測定可能な新型の全身型骨密度測定装置( DEXA )を導入しています。また、骨粗鬆症学会認定医による、適切な薬剤選択や、有効性の高い長期治療計画を提供しています。
骨粗鬆症治療と、その先へ
骨粗鬆症治療は予防治療ですので、基本的には治療期間中は何も起きないことが望ましいです。また、骨密度は年齢とともに低下するため、生涯治療となることが多いです。健康寿命を伸ばすという大きな目標のためには『継続は力なり』と考えております。治療によって骨密度が上昇することは治療意欲の維持にひと役買いますし、万が一転倒してしまっても骨折せずに済んだ際には、治療の重要性を感じていただけるかと思われます。
近年は、高齢化に伴い、骨粗鬆症のみならず、筋力・運動機能の低下や、変形性関節症・変形性脊椎症といった慢性疼痛疾患などが複合して生じることが、身体機能の低下を引き起こすことが注目されています。当院は、原因にもとづいた慢性疼痛疾患の治療を重視し、運動リハビリテーションを積極的に導入することで、骨・関節・筋肉の機能を総合的に高めていく医療を提供することを、最重要課題としております。